親なきあとの準備
「親なきあと」の備えは何から?本人の希望と暮らしを整理する相談メモ
「親が支えられなくなったら、この子の暮らしはどうなるのだろう」。考えることが多く、どこから相談すればよいか迷う方へ。まずは、ご本人の希望と今の生活を、一枚のメモにまとめるところから始めてみませんか。
この記事は、主に成人の障がいのある方とご家族に向けた、相談前の準備の提案です。成年後見や民事信託などの利用をあらかじめ決めるものではありません。
1.ご本人の希望と、家族の心配を分けて書く
厚生労働省の意思決定支援ガイドライン(第2版)は、本人の意思や好み、価値観を踏まえて選択を支える考え方を示しています。結論を急がせず、決めるのを待つことや、一度決めたことを変えることも尊重します。説明や意思疎通の方法を本人に合わせて工夫することも大切にされています。[1]
この考え方を相談準備に生かし、メモには「本人が伝えたこと」「家族が観察したこと」「家族の心配」を分けて記してみましょう。言葉で伝えることが難しい場合も、家族の考えをそのまま本人の希望とせず、普段の支援者と一緒に確かめるきっかけにします。
書き方の例(架空の例です)
- 本人が伝えたこと:「今の作業所に通い続けたい」
- 家族が観察したこと:予定を写真で見せると、自分から準備を始めることがある。
- 家族の心配:親が入院したとき、通所の付き添いを誰に相談すればよいか。
まだ分からないことは「未確認」と書いておいて構いません。誰が、いつ確認したことかを添えると、後から話し合うときに役立ちます。
2.お金・くらし・住まいを、分かる範囲で整理する
自治体による準備の支援例として、寝屋川市は「親なき後サポートノート」を案内しています。サービスや制度の利用に向けて考えることを記入し、支援者と相談しながら活用するものです。対象条件がある市の事業なので、利用を希望する場合は同市の案内を確認してください。[2]
以下は当事務所が提案する相談メモの項目です。自治体の公式様式ではありません。すべて埋めることを目標にせず、今困っている項目から書いてみてください。
お金:毎月の暮らしを支える収入と支出
今ある収入、食費・家賃・サービス利用料などの支出、支払いを手伝っている人を書きます。金額が分からない項目は、確認する相手だけでも記しておきましょう。
くらし:続けたい日課と必要な手助け
通所先、外出や食事での手助け、安心できる伝え方、ご本人が大切にしている習慣を記します。「できないこと」だけでなく、自分でできること、工夫があればできることも残しましょう。
住まい:本人の希望と、これから確かめたいこと
今の住まいで続けたいこと、気になる暮らし方、見学や相談で聞きたいことを書きます。家族が希望する住まいと本人の希望が違う場合は、両方を分けて記します。入居先や利用できる支援は、このメモだけで決めずに相談しましょう。
連絡先:親が動けないとき、最初に相談する相手
普段の支援者、通所先、相談窓口と、まだ連絡を取れていない相手を整理します。緊急時の受入れや支援を頼めるかは、相手に確認してから記入しましょう。
メモには記入日を付け、暮らしや希望が変わったときに見直す方法をおすすめします。共有する相手と内容は本人と相談し、初回相談用のメモには暗証番号やパスワードを書かないようにしましょう。
3.「一番心配なこと」を一つ選んで相談する
大阪市では各区に障がい者基幹相談支援センターがあり、障がいのある方や家族等からの相談、福祉サービスの利用援助、専門機関の情報提供などを行っています。市の公式ページから各区の連絡先を確認できます。[3]
大阪市にお住まいの方は、お住まいの区の窓口や普段の相談支援専門員に、メモを見せながら相談してみましょう。市外の方は、お住まいの自治体の障がい福祉窓口で相談先を確認してください。
- 「今、一番心配なのは何か」を一つ伝える。
- 本人の希望と、まだ確認できていないことを伝える。
- 次に誰へ相談するか、何を確認するかを一緒に整理する。
このメモは相談のための準備です。
契約書や申請書の代わりにはなりません。支援を受けられるか、どの制度が合うかは、ご本人の状況と利用時点の制度を踏まえ、担当窓口や関係する専門職と確認してください。
今日は「続けたい暮らし」と「今の心配」を一つずつ書くだけでも構いません。ご本人と一緒に考え、相談相手と少しずつ具体的にしていきましょう。
参考情報・出典
確認日:2026年9月26日。窓口や事業の案内は変更されることがあります。利用前に各機関の最新の案内をご確認ください。
- 厚生労働省「障害福祉サービス等の提供に係る意思決定支援ガイドライン(第2版)」(PDF)2026年9月版。本文6〜8ページ「意思決定支援の定義」「基本的原則」を参照。本人の意思を尊重し、伝え方を工夫する考え方の根拠です。
- 寝屋川市「愛情のバトン・親なき後サポートノートについて」ページ更新日:2026年7月10日。「親なき後サポートノート」の説明・対象者・利用の流れを参照。準備を記録し相談に活用する自治体の事例です。
- 大阪市「障がい者基幹相談支援センター」ページ掲載日:2026年8月14日。冒頭の事業説明と各区の連絡先一覧を参照。大阪市内の相談先の案内に使用しています。
メモの項目と架空の記入例は、上記の考え方を参考に当事務所が作成した提案です。公的機関が定めた必須項目ではありません。